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ICT産業が嫌いな理由

多重下請け、人材派遣構造が阻む業界のイノベーション・日本のIT産業の課題(2)
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITac000017122007

ICT産業にはびこる多重下請け構造。
これだから、私はICT産業が嫌いなのだ。
一歩間違うと人身・奴隷売買になるようなことをしている業界の構造にはほとほと嫌気が差し、虫唾が走る。
それゆえ、仕事の方法も革新的にはならず、旧態依然としている。
死語となりつつあるWeb2.0を牽引するGoogle、あるいはAppleなどの仕事の方法、オフィスの文化がすべてすばらしいとは限らないが、よい点は取り入れて少しずつ「カイゼン」させることも必要だと私は考えている。
※トヨタ式の方法がすべていいというわけでもないので、誤解なきよう
とにかく、現状の業界構造では明るい未来はない。
正直な話、こんな負のスパイラルに身を置くくらいなら、早く抜け出したいくらいだ。
ただ、文句ばかり言ってもしょうがないので、すぐには無理でもいずれは手を打つつもりだが。

「ITのプロではなく、人の管理が仕事」の段落では、興味深いことが書いてある。
> 本来、プロフェッショナルの仕事は安易に外注されないものだ。
> 委託側の大手企業では30代前半ともなるとプロジェクト管理を任されることが多い。下請けの年長技術者を抱えて人の管理のプロになることを強いられる。
> 新しい技術の研修を受けても実践で試すことなく耳学問で終わってしまうケースもある。優秀なプロジェクトマネジャーほど次から次へと、様々な種類のプロジェクトを割り当てられる。得意分野や興味のある分野に集中して取り組むことができず、プログラムのコードを実際に書くことは下請けに任せきり。革新的なシステム設計ができるような「ITアーキテクト」の人材が育たない理由の一つはここにある。

最初の文は納得。
プロフェッショナルの仕事というのは、一番うまみがあるからだろう。
うまみのあるところを他の人に譲りたいと思う人は、そう多くはないだろう。

2番目の文にある「人の管理のプロ」は、必要な場面もあるだろう。
ただ、そのような人の存在が間接的に「一歩間違うと人身・奴隷売買になるようなこと」への実行につながる点は、きちんと考えるべきかもしれない。
もっとも、人の管理も含めたプロジェクト管理を否定するものではない。
私も日記で何度か主張しているように、プロジェクト管理は仕事、もっと書くとお客さんを満足させたり困っている人たちを助けることを達成するための手段であり、仕事の目的ではないことには注意すべきだろう。

3番目の文にある「優秀なプロジェクトマネジャーほど~」は、よい面もあるだろう。
幅広く様々な分野の仕事を経験できるからだ。
ただ、それでは器用貧乏になってしまうこともあるので、「得意分野や興味のある分野に集中して取り組む」ことも確かに大切だと、私は考える。

上の記事の後半では、日本のビジネス向けパッケージソフトが海外勢に席巻されていることを取り上げている。
日本のICT産業が何故海外で通用しないのか、その理由を考えるひとつの手がかりになりそうだ。

このことに関連し、以下の記事を紹介。

あらためて衝撃――日本のソフト産業を統計分析する
http://www.atmarkit.co.jp/news/analysis/200705/21/software.html

> (前略)2004年の日本のソフトウェア輸出額(PCゲーム除く)は320億円。対して輸入は3646億円。うち、米国からの輸入は3292億円と90%を占める。懸念される中国からの輸入は171億とそれほどでもない。日本語という言葉の壁はカスタムソフトの海外開発の進展に一定のブレーキをかけているのだ。そして、国内IT市場の規模は情報サービスだけで6兆円を上回る規模だ。
> この国内市場規模を見ると、国際競争力はないが盤石な国内市場を持つ安定した産業に見える。何か問題でも? の声もありそうだ。いや、これが問題大ありで、日本の情報サービス産業は基礎体力、付加価値がないのだ。

国内のICT企業は、(テレビゲームなどを除き)外国へのソフトウェア販売が少ないな、グローバルなビジネスを進めておらず、国際協力は低そうだな、というのは感じていた。
これを裏付けるような結果が、統計として現れているのかもしれない。

これは、言葉の壁も1つの要因ではあるが、それだけでなく業界の構造にも起因しているであろう。
それは、次の文からもわかる。
> 情報サービス産業は、人材の育成、そして企業体としての開発効率向上に対してほとんど投資がなされていない。
記事の最初でも書いたように言い方は悪いが、人さえいれば何とかなるという考えのもと、人を人として扱っていない、まるで奴隷売買・人身売買まがいのことをしている会社が多いのかもしれない。

また、ここ10年以上はリストラの名の下、長期的ビジョンが欠如した、もしくは誤った状態で、金のなる木だけを残してほかは切り捨てるという会社が数多くあったようだ。
一方で、いかに人件費を下げ、利益の確保だけに奔走するような会社が増えたような気がする。
その過程で、会社は社員の能力向上をおろそかにしたのかも知れない。
結果として、そのツケは会社に回ってくるのだろう。

見出しは「あらためて衝撃」とあるが、こうなったことは衝撃でもなんでもなく、自明の理だったのかもしれない。
そして、その現実から目を背けていただけだろう。
ICT産業の負った傷はあまりにも深い。

ICT業界で多重下請け構造が横行し、人が大事にされない理由を考えるには、以下の記事も参考になる。

・空前の人材不足でもエンジニアが大事にされないのはなぜか
http://www.atmarkit.co.jp/news/200711/27/symantec.html
この記事によれば、ITエンジニアは世界的に不足しているらしく、日本は特に顕著とのこと。
記事ではその理由を、「日本の情報システムが人に依存しているから」と推測している。
また、「欧米は人材不足をツールで補おうとするが、日本は新技術に消極的」なうえ、(企業は)「人に依存している反面、多くの日本企業は人への教育投資を渋ってきた」という。
それゆえ、ICT産業では人さえいればいいという考えが蔓延し、人が大切にされない文化が生まれているのかもしれない。

ちなみに、
・OJTを受けられないITエンジニアは、どうすればいい?
http://www.atmarkit.co.jp/news/200602/07/flm.html
の記事によれば、
> 企業が求めるのは技術と実践力、ヒューマンスキルを兼ね備え、それを基に行動力を発揮できるITエンジニア
なんだそうだ。
上記は技術を除けば、ITエンジニアに限らずすべての社会人で求められるスキルだろう。

「レベル低い」「エセ独立系」「自己矛盾」――ジャステック神山社長にITベンダーの現状を聞く
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITzx000020122007

神山社長の主張がすべて正しいとはとても思えず、また言いたいことは山ほどある。
ただ、以下の点については同意できる点がある
(以下、上記記事より引用)。

----引用開始----

――「人月」という技術者を拘束する期間で見積もりをする方法が業界では一般的ですが、それがいけないのでしょうか。

 人月という計算の仕方がまったくだめだと言っているわけではない。

 顧客から受注をしたときに「○人月かかります」というような見積もりを先に作るところに問題がある。開発の人数や手間がどのくらいかかるのかは顧客にはまったく関係がない。顧客がほしいのはシステムそのものだ。だから、まずこんなシステムを作りますと言うべきだろう。そして、その制作費用はいくらですと説明する。そのいくらというところの計算の根拠に人月を使うのはわかる。

----引用終了----

別の表現で書けば、顧客が求めるものは「成果」である、ということだ。
この点は納得は出来る。
ここで私が「成果」としたのは、「(IT)システム」にすれば対象が限られてしまうからだ。
ただ、実際には「期限・納期」があるのだが。

また、人数はともかく、ネームバリューなどを顧客が求める場合もあるだろう。
どこの会社が担当するのか、その会社のどの部署の誰が担当するのかというのも、仕事をお願いする上で重要かもしれない。

ここで、プロジェクト管理への理解が深まりそうな、以下の記事を紹介。

プロジェクト現場の幼稚園化
http://blogs.itmedia.co.jp/hiranabe/2007/12/post_09c7.html?ref=rssall

ここでは、プロジェクト現場をいい意味で「幼稚園」と書いている。
人間や仕事のレベルが幼稚園級、「学級崩壊」などと近いニュアンスで使われているわけではない。
ソフトウェアの開発でも、幼稚園の学芸会のように、新しく得たものなどを見せ「気付き」を得る場面があってもいいのでは、が要旨。
確かに、こういうことはあったほうがいいかも。
本文の通り、知識共有やそれを喜ぶ場はあるほうがいい。

また、ソフトウェア開発に嫌気がさしているときに、
> ソフトウェア開発は、「ナレッジ創造(Knowledge Creation)」活動なのだ。
の文を読むと、ほんの少し勇気付けられる。
そして、
> ソフトウェア開発は、知識創造、すなわち、「学習」と「フィードバック」の場である。
とあるが、「学習」と「フィードバック」の場はソフトウェア開発に限らず、多くの場面である。
そのことを肝に銘じたい。

ICT産業は、中身そのものよりも「人」を単位に仕事の成果や内容を決めるという印象がある。
それも、私がICT産業を嫌う理由の1つである。
さらに、「きつい」「帰れない」「給料が安い」の3Kなど、悪いうわさに事欠かない。
火のないところに煙は立たないことを考えると、これら3Kにも真実味が出てくる。
こういったことを目の前にして、ICT産業に未来を感じると書くことのほうが無理があるのだ。

これはICT産業に限らないが、少なくとも
・少しでも給与を上げる
・教育に力を入れる
だけで、状況は変わる。
私はそう考えている。
あとは、自分自身で変えるしかない。
人のせいにしても、何も変わらないし、何も生まれない。

そして、究極的には会社の看板ではなく、自分の名前そのものを価値にして仕事を得られるようにしなくてはいけない。

○関連記事
優れたナースが改善の阻害要因という皮肉
http://danpaleta.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_3806_1.html

参加者が明かすIPAフォーラムの裏話
http://danpaleta.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/ipa_1ce1.html

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