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理数系の学力低下と「教育の沙汰も金次第」

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日本「お家芸」理数系で順位転落、OECD学力調査で判明
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071204-00000012-yom-soci

経済協力開発機構(OECD)は4日、加盟国を中心とする57の国・地域の15歳男女計約40万人を対象にした2006年国際学習到達度調査(略称PISA)の結果を世界同時発表した。

 3回目の今回、日本は、すでに2位から6位に転落したことが明らかになっている「科学的応用力」に加え、「数学的応用力」が6位から10位へ、「読解力」も14位から15位へと全分野で順位を下げた。今回の対象は、詰め込み教育からの脱却を狙った「ゆとり教育」で育った世代で、日本が最も得意としてきた理数系で世界のトップレベルから転落したことは、今年度末に改定予定の次期学習指導要領に影響を与えそうだ。
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学力低下を何でもかんでも「ゆとり教育」のせいにする風潮が、最近は強いようだ。
「ゆとり教育」の狙いの1つは応用力の強化だったはずだが、それが成果として現れていないことは、ある程度認める必要がある。
ただ、従来の詰め込み教育の弊害を少しでも減らそうという努力はしていたのだ。
あと、勉強時間を増やせばいい、という論調もある。
確かに、数十年前と比較し、学習時間は減っているようだ。
しかし、学習時間を増やしたからといって学力が向上するなら、何の苦労もない。
単に時間を増やすだけでなく、学習の質の向上も必要だ。

「科学技術社会を支える人財の育成に対する懸念」(http://www.mri.co.jp/COLUMN/ASPECT/NOGUCHI/20071227NK.html)では、PISAの結果について、『日本(註: 理数系分野での日本の順位)に関して、「順位が落ちたといっても、イギリス、ドイツといったヨーロッパの先進国よりは上なので心配は要らない」という声も聞こえてくるが、やはり知恵で生きていかなくてはならない日本としては、このままずるずるとその地位を後退させることは、避けなくてはならない』とある。
日本から理数系分野を含む「知恵」が失われたら、どうなるのか。
私は、何も残らず、世界で生き残れないと考える。
それゆえ、早急に手を打たなくてはいけないだろう。

加えて、短期利益志向があると上記コラムで指摘がある。
コラムの文章を引用する。
『岩本准教授の言によると、小学生は、まだ科学的な事柄に対して興味を示すが、中学・高校の受験勉強の間で急速に興味を失っていくという。また、日本はあふれんばかりの科学技術製品やシステムに囲まれており、科学技術が環境化している。そのため、かえって科学技術に興味がわきにくいということもあるかもしれない。しかし、若者の行動パターンが、受験競争と相俟って、「短期的な利益や必要性が見出せないものには手を出さない」とか、「分かりにくい分野に対しては、努力してまで理解しようとしない」ということが起きているとすれば、これは大きな問題である。とはいえ、思い返せば、受験に必要でない科目の時間を大きく減少させたのは、ほかならぬ学校自身であった。
こういった短期利益志向は、科学技術に対する興味を失わせる。これでは、科学技術創造立国を支える人財が育つわけが無いのである。
この短期利益志向の風潮は、科学技術社会を支える人財を育てないだけではなく、日本人としての辛抱強さとか大らかさという基本的性格も変えてしまう怖れがある』

世の中、なにもかもすぐに結果が出ることばかりではない。
まいた種が芽を出し、成長するまでに時間がかかることはよくある。
結局は長期的な視野に立って教育を考えることが、科学技術のみならず様々な分野での学力を向上させることにつながるだろう。

上記と関連して、理系離れが深刻とのことだ。
これを食い止めるため、中学生や高校生らの理系への関心を高めようという試みもある。
例えば、女子高生に理系のよさを伝えようという試みなどだ。
(女子)高生ではすでに遅いという意見もあり、確かに理系の啓蒙活動は中学生以下のほうが効果的かなとは思うが、高校生の時点であっても何もしないよりはましだろう。
上はあくまでも例であって、こういった試みは高校生に限らず中学生以下でも実施されているようだ。
それがまだ成果を挙げているかどうかはなんともいえないが、こういう地道な活動も理系離れを食い止めるためには必要だ。

一方で、「学力格差と子供の貧困」(http://www.mizuho-ir.co.jp/column/shakai071211.html)によれば、順位の低下はわずかな点差によるもので、問題視するほどのものではないという意見もある。
上記コラムでは、『注視すべきは、「読解力」において習熟度が著しく低い生徒の割合が、2003年に急増したまま推移している点』や、学力低下とこどもの貧困の関係について書かれている点が興味深い。

これと同時並行で、文系的能力も今まで以上に向上させることができれば、問題はないだろう。
例えば、語学力の向上だ。
そのことを感じさせる記事をたまたま見つけたので、紹介する。

1月6日付毎日新聞朝刊の「発言席」(毎日jpには該当記事見当たらず)に、矢田部厚彦・元駐仏大使の「外交官の互角力向上を急げ」が掲載されていた。
その中で、「言語系統の孤立した日本語を母国語とするハンディキャップは歴然である」と前置きし、世界各国には様々な言語に堪能な外交官はざらにいることを挙げている。
また、外交力向上への対策をしても果実が得られるのは20年後、外交の世界では外国からトレードは出来ない、精鋭主義によって戦力強化を図る以外にない、なども書いている。
肝心の語学力向上だが、奨学金をコンクールで選抜した中・高生に支給し、英才教育を施すことを主張している。
具体的な教育内容は、英語国の高校に1年留学、大学在学中に海外協力隊員を体験する、日本の大学院修士修了後は著名外国大学の学位取得の義務付け、などだという。
外国に行くばかりで外国で何を学ぶかというビジョンが抜けているのが気になるが(外国へ行くことは手段であって目的ではないのでは)、徹底的な外国語漬けの生活というのは語学力向上のヒントになるかもしれない。
上の内容は徹底的なエリート教育であり、一般の人たちが全員できるわけではない。
ただ、日本語をきちんと勉強するという前提の下、英語を母国語レベルまで使いこなせるようにすることは、学力向上には有効だろう。

「学力格差と子供の貧困」にあるように、親の収入格差がこどもの学力の差、ひいては階層の固定化(医者などはすでにその傾向があるかもしれない?)につながることは、避けたいものだ。
英国では、すでに手が打たれているとのこと。
とにかく、金で頭のよさを買えるような教育制度や社会になるのは勘弁だ。

そんな中、私立のハーバード大学のように学費を実質値下げした例もある。

Harvardの戦略的学費値下げ:年収2000万円までのミドルクラス対象
http://www.chikawatanabe.com/blog/2007/12/harvard.html

ハーバード大の学費は$30000強/年だが、全米の相場はこんなものらしい。
それが奨学金の適用を拡大することで、世帯収入が$60000/年では無料(以前は$40000/年)、$180000/年までは年収の10%以下になるとのこと。
この部分だけ読めば「庶民にも優しいな」と思うかもしれないが、実際は優秀な学生を集め、卒業後高収入の仕事についてもらい、あとは寄付金をたんまりもらうという、大学の考えがあるようだ。
なお、アメリカでも大学の格差は広がる一方とのこと。

日本でも、例えば東大は低所得者の授業料を減免し、博士課程の学生も減免措置をするとのこと。
http://sankei.jp.msn.com/life/education/071110/edc0711102006007-n1.htm
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070929AT1G2805M29092007.html
ハーバード大などと同様、寄付金に支えられている大学だからこそ出来るようだ。
また、東工大も博士課程の学生の授業料を実質無料に。
http://www.asahi.com/life/update/1222/TKY200712210405.html
もっとも、博士課程の場合、上記記事にもあるとおりいわゆる「学振研究員」は対象外だが、「学振研究員」を取れる人は本当に優秀(門は狭い)なので、授業料うんぬんは関係ないだろうけど。

最後に、学力の向上はもちろん、こどもに未来ある教育制度を作り上げる必要がある。
学力低下の遠因とされる収入格差の固定化、理系離れを食い止める、はては学級崩壊など学力にまつわる様々な問題が山積しているが、1つ1つ地道に解決していくしかないだろう。

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