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真の敵は海外・危機感のない日本企業

なぜ危機感がない(夏野剛のネオ・ジャパネスク論)
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITbq001011092008

まず、「日本の企業に元気がない」とばっさり切り捨て、大企業のトップは定性的な当たり障りのない意見を言う人が多く、メインストリームの人ほど穏便に生きているように感じる、と指摘している。

前半の「定年までは持つはずさ・・・?」では、コンプライアンスの徹底により不払い残業の撲滅と残業の管理が進められ、企業から「24時間働くビジネスマン」像が姿を消したこと、以前は有能な若手ほど仕事が自然と集まり淘汰が起こる状態だったことを指摘している。
そして、「必然的に仕事とプライベートが両立され」、「会社だけが人生じゃないし、個人の生活を充実させることが会社のためにもなる」ことも指摘している。
ただ、これでは世界に勝てないと警鐘を鳴らしている。
「今のやり方を守っていけば、きっと定年までは持つさ」なんてことはなさそうだ。
「世界は激変している。熾烈な競争が繰り広げられている。一方で、日本企業は海外に出て行くしかこれ以上の成長はない。少子化により人口は減る。国内マーケットは縮小していく。正直、そんなに甘くない」
それが根拠にあるようだ。

若手に限らず、有能な社員ほど仕事が自然と集まるのは今でも変わらないが、仕事にかけられる時間は減っているのかもしれない。
そんなことは仕事のない私が書く言葉ではないだろうけれど。
また、日本企業が海外へ活路を求める必要があることは、それほど大きな異論はないだろう。
ただし、少子化だけでなく、高齢化なども考える必要があるが。

中盤の「ITによって加速する変化のスピード」では、「最大の問題は、マネジメントと一般社員が同じ感覚であること」で、「国際競争に生き残ることは不可能」と指摘している。
高度成長期とは異なり、モチベーションが安定した「現場」。
こちらは、海外に移転可能である。
一方、マネジメントについては「幹部は取り替えがきかない」と指摘し、日本の経年数重視昇進システムを暗に批判している。
そんなシステムが生んだのが、「勤務年数が長い分、危機感は薄い」「変革意識に乏しい」「一番早く帰り、率先して休みをとる」が「給料は高い」幹部、自分に役職がある理由が人生を会社に捧げたことだと思っている幹部なのだろう。

「過去の経験はもはや役に立たない」と指摘しているが、それはいつの時代も同じことだろう。
もっとも、「市場の変化のスピードはITによって加速された」ことは、15年位前までは想像も付かなかっただろうけど。
また、幹部になりえる人材は簡単に育つはずもなく、年功序列で決めるものではないだろう。
若くても能力のある人間を登用できる仕組みが整っていれば、そんな心配は無用である。
しかし、コラムで主眼を置いている大企業であればあるほど、そういった仕組みが用意されていないのだろうけど。
「一番早く帰り、率先して休みをとる」は、労働時間短縮のお手本を示す意味ではよいだろう。
また、幹部とはいえ人間であり、働くだけでなく家族を省みることも大切だ。
もっとも、平社員は残って仕事しているにもかかわらず、上司はさっさと帰ることがあまりに多い場合、平社員のモチベーションは下がるだろう。

最後に、「自らの競争力を研ぎすますマネジメント力」で、「いまこそマネジメントのリーダーシップが問われている」と書いている。
本文によれば、IT革命によりすべての可能性の追求は不可能となり、鉄砲は数撃っても当たらない。
それを根拠に、「焦点を定め、限られたリソースを効果的に使い、結果を出す」ことの重要性を説いている。
それは本文の言葉を借りれば「思い切った割り切りと『選択と集中』」であり、自らの競争力を分析し、強化し、研ぎ澄ますことである。
そして、この意識を持つ役員は多数派ではないことは確かだ、と結んでいる。

以上を読んだ感想としては、会社の幹部はライバルが世界にいることを意識し、その認識を社員も共有しなければ、いずれ会社はつぶれ、自分の首も飛ぶだろう、という夏野氏の警告を無駄にしてはいけないということだ。
いくらグローバル化が進んでいるとはいえ、いまだに日本人同士で争い、つぶしあいをしている業種もあろう。
あるいは、日本では誰もライバルがいないことをいいことに、お山の大将になっている一部会社もあろう(恥ずかしながらウチの(以下略))。
こういう状況は、見る人が見ればある意味めでたく、平和なのだろう。
本当に戦わなくてはいけない相手は日本にいないにもかかわらず、のんきに足を引っ張り合っているのだから。
別の言葉で書けば、グローバル市場という広い場所を俯瞰するのではなく、日本という小さな場所を把握するだけで精一杯ということだろう。
これには、例えば携帯電話の世界が当てはまるだろう。
国内メーカーは、良くも悪くも日本の市場(カメラ搭載、FeliCa搭載、ワンセグ搭載など)に特化した携帯電話を作り続け、海外メーカーの隙を許さないように見えていた(これには、日本の携帯電話の機能が海外で受け入れられていないという面もあるが)。
メーカーの淘汰もそれほど多くはなく、2000年前後にパイオニア、デンソー、ケンウッドなどが撤退したくらいである。
そして国内メーカーは海外にそれほど目を向けず、国内勢同士の足の引っ張り合いをし続けていた結果、ほとんどのメーカーは海外では存在感がなく製品も通用しなくなり、海外や国内から撤退するメーカーも現れ始めた。
上のような背景もあり、携帯電話の世界では日本はガラパゴス諸島だ、なんて意見も出始めている。
iPhoneは日本で苦戦しているとのことだが、その理由の1つが日本のガラパゴス諸島化などという意見もあるほどだ。
(個人的には、FeliCaとワンセグを搭載したiPhoneが日本で出れば、日本の携帯電話の市場は大きく変わるだろう。iPhoneがガラパゴス諸島化した日本に適応し、浸透できる可能性があるのだから。加えてiPhoneの漢字入力が改善されたら、どうなるかわからない)
そんな日本の状況をほくそえんでいるのが、ほかならぬ海外勢だろう。
日本よりもずっと市場の大きい北米や欧州、成長が望めるアジアなどにおいて、日本企業の付け入る隙を作れなくしつつあるのだから。
いずれにせよ、携帯電話に限らずどの業種・企業においても、本当の敵が海外にいることに幹部が気付かず、安穏としているようでは、社員に危機感が植えつけられるはずもなく、社員は会社ともども沈没するだろう。
幹部が気付いていないなら、せめて社員が気付き、自律的・自発的に行動しなくてはいけないのかもしれないが。

一方、本論とはややずれるが、本文を読む限り夏野氏は仕事とプライベートが両立できるほど暇なら働け、と考えているのだろう。
そうしなければ、海外との競争に負ける……
その点は私も納得はいく。
また、日本では戦後からの復興という意欲、あるいはハングリー精神が旺盛だった高度成長期のように活力に満ち溢れている時期もあった。
しかし今はそのような活気が発展途上国にある。
日本など先進国に追いつけ追い越せと勢いづいており、日本の地位も危ない。
しかし、効率よく働くという点も考えなくてはいけないだろう。
日本以外の先進国は日本ほど働いていないが、それでも成長はしている。
100m10秒のペースでマラソンを完走できる陸上選手がいないのと同じように、全力疾走のような働き方をしても長くは続かず(長い人生では全力疾走が必要な場面もあるだろうけど)、むしろ効率を上げてこつこつ働いたほうが、長い目で見たら成長することもあるのかもしれない。
そして、働きすぎでうつ病などの病気や過労死になるのであれば、そちらの方こそ問題ではないのか。
もっとも、会社の労働規制も上記観点からはある意味仕方ないが、上の文章を読むと海外の勢力に打ち勝つには労働規制うんぬんなどとのんきなことをいっていられないのも確かなようだ。
(さらに書くと、会社の労働規制の裏には、残業代などを削減するという狙いもある。「現場」においては、海外勢、特に労働コストで優位に立つ途上国に打ち勝つという側面もあるだろうけど)

結局は、ワークバランスをある程度考えつつ、海外勢との戦いに備え働かなくてはいけない、ということか。
オシム元日本代表監督も「君たちはプロだ。休むのはオフになってから、あるいは引退してからで十分だ。シーズン中はサッカー以外のことなど考えるな」といっているくらいだ。
社会人ならさしずめ「君たちはプロだ。休むのは長期休暇になってから、あるいは退職してからで十分だ。勤務中は仕事以外のことなど考えるな」といったところか。

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