« Songsmithが熱い? | Main | 打ち砕かれるクラウドコンピューティングの神話 »

相次ぐレース撤退に思うこと

2008年以降、日本のチームやメーカーがレースから撤退する、というニュースが相次いでいる。
2008年は、5月のF1・スーパーアグリ(http://www.saf1.co.jp/)、12月のホンダF1撤退(http://www.honda.co.jp/news/2008/c081205.html)とスバルWRC「卒業」(http://www.subaru.jp/information/topics/2008/wrc/)、スズキもWRC参戦から1年で撤退(http://www.suzuki.co.jp/release/d/2008/1215/)と、いろいろあった。
2009年になってからも、カワサキのモトGP撤退(http://www.khi.co.jp/khi_news/2009data/c3090109-1.htm)、三菱自のダカールラリー撤退(http://www.mitsubishi-motors.co.jp/publish/mmc/pressrelease/news/detail1892.html)と続く。
以下の記事にある企業のレース撤退一覧が参考になる。
・砂漠の雄、不況に涙
http://www.yomiuri.co.jp/atcars/ms/rally/20090205-OYT8T00420.htm
三菱のダカールラリー撤退により、「国内メーカーのサーキット外競技への直接参加もなくなった」とのこと。
自動車レース競技は、急速な景気後退による自動車会社の業績不振のしわ寄せを真っ先に受ける形となってしまった。

自動車メーカーは、株式会社である以上利益を出さなくてはいけないのだから、不景気でレースどころでなくなったのであれば撤退も仕方ない。
一方で、夢を売ることも忘れないで欲しかったけど、それは部外者のわがままなのだろう。
そんな中、トヨタは赤字決算が見込まれているが、それでもF1から撤退しないのはレース文化にとってよいことである。

ホンダがF1から撤退したときは、以下をはじめとするニュースが流れた。
・ホンダがF1撤退、経営資源を次世代技術に配分
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-35283820081205

ホンダは今回も含め、過去3回F1へ参戦していた。
1回目は独自チーム、2回目はエンジンのみ(アイルトン・セナなどを優勝へ導く)、そしてエンジンに始まり、名門チーム・ティレルの流れを継ぐBARをタバコメーカーから買収した3回目。
そして、その3回目の参戦に終止符が打たれた。
入社動機が「レースがしたいから」だったというホンダの福井社長にとっては、F1撤退は苦渋の決断であったことは想像に難くない。
だが、ホンダも世界経済の悪化には逆らえなかったということか。
福井社長が「11月に入ってから事業環境が加速度的に悪化した。9月までの状況なら撤退の決断はなかった」、「単に経済が冷え込んでいるだけでなく、100年間繁栄してきた自動車産業は次の100年に向かう大きな変化を迎えている。F1に注いできた情熱、リソース、人材を新しい時代に振り向けるべきだという強い意志と受け取ってもらいたい」と記者会見で述べたほどなのだから、相当状況は深刻なのだろう。
チームの売却先に関しては、2月の時点でもまだ決定したというニュースはない模様であるが、チーム消滅まで予断を許さないだろう。
もっとも、チーム消滅は最悪のシナリオで、これが起こる可能性は低いと私は見ているし、起きて欲しくはない。
売却先がどこになるか、私は見当が付かないが、必ず決まるはずだ。

最高レベルの技術を投入して作られ、広告を付けたマシンを、最高レベルのドライバーが走らせるF1は、ある意味走る広告塔である。
注目度の高いF1は、広告料も高額といわれるからだ。
一方、自動車メーカーにとっては技術力を誇示する場にもなる。
たとえそれが、エンジンなどの供給だけであったとしても。
トヨタがF1へ参戦したのも、宣伝効果と技術力の誇示・向上にあるといわれる。
エンジンのみも含め、以前からF1へ参戦していたホンダも、そのことはよくわかっていたはずである。
だが、近年は技術の市販自動車へのフィードバックが、どのメーカーも不十分だったようだ。
おまけにF1をスポーツカーのイメージリーダーとして使おうにも、ホンダも含めスポーツカーが少ない会社にとっては、その効果は薄い(例えば、私がスポーツカーと呼べそうなホンダのクルマ(発売中)はS2000とシビックタイプRくらいなものだ)。
これではF1に関係している自動車会社にとって、年間数百億ともいわれる参戦費用のうち、ある意味広告料として、チームを運営しているなら広告などでまかないきれない残りの金額を出しても、割に合わないだろう。
経営状況が厳しいならなおのこと。
それが、ホンダ撤退の遠因かも知れない。

エンジンの供給を受けるなど、ホンダと密接な関係を持っていたスーパーアグリが、今年になりシーズン途中で撤退したが、その時点ではまだ世界経済がここまで悪化する状況ではなかった。
だが、今振り返ると、スーパーアグリ撤退はホンダ撤退の予兆だったのかもしれない。

2007年よりホンダは、F1マシンに広告ではなく、地球の写真を描くようになった。
これは、F1マシンを通し、地球環境問題への意識を向上させようというものである(これはこじつけだ、排ガスを撒き散らすF1が環境問題を取り上げるなど笑止千万、という批判もあったようだ。気持ちはわからないでもないが、環境問題はF1で取り上げるからこそ重みを持つのだ)。
2007年は"myearthdream"のスローガンの下、黒いボディに地球を描いた。
そして2008年の"earthdreams"では、最初にホンダがF1へ参戦したときのボディカラーにも通じる白いボディに地球を描き、2007年のコンセプトを進化させていた。
こういった試みのマシンがもう見られなくなるかもしれないと考えると、とても残念だ。
一方で、地球の写真を描くようになった理由として、スポンサーに恵まれなかったからだという話もある。
詳細は長くなるので割愛するが(これと関連して、記事前半でホンダはタバコメーカーからチームを引き継いだと書いたが、これはF1でのタバコ広告規制が理由である)、これも撤退の要因の1つかもしれない。

2007年以降のホンダの成績は芳しくなかった。
2006年にチームに勝利をもたらし、ポイント争いでも上位に食い込む力を持っていたジェンソン・バトン、フェラーリに在籍していたルーベンス・バリチェロ(世界王者5連覇を果たしたミハエル・シューマッハのチームメイトを務めた)を擁しても、上位入賞は少なかった。
下の順位に終わることのほうがほとんど。
そして、来年こそは巻き返しを、という矢先の撤退・売却騒動。
日本人や日本のチームを応援し、F1を見ている人間としては、残念だとしか書けないのがもどかしいところ。

ホンダのF1復帰の可能性はなんともいえない。
ホンダは過去2回F1から手を引いたが、このときは「休止」という表現を使った。
でも、今回は「撤退」。
もしかすると当分復帰はないのかもしれない。

この経緯については、最近になり掲載された次のインタビューが参考になる。
・原点に立ち返り、危機と戦う ホンダ・福井威夫社長
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090203/184813/?ST=manage

上で書いたことの繰り返しになってしまうが、レースがやりたくて入社した福井社長にとって、F1から撤退するというのは断腸の思いだったことが、日経ビジネスの記事からも伝わる。
記事に書かれている覚悟があるなら、F1撤退も仕方ない。
ホンダはそれだけ本気になり、不況を乗り切ろうとしている。

スバルはWRCについて「卒業」という言葉を使っているのが、ちょっと気になる。
卒業ということは、もうWRCには戻らないとも読み取れる。
もっとも、スバルのプレスリリースを読む限り、メーカー単独では参戦しないけれど、スバルの車で参戦するチームにはサポートをする模様である。
それが救いだろう。

さらにスズキもWRCから撤退し(こちらもスズキ車で参戦するチームへのサポートはする模様)、WRCに参戦する日本の自動車メーカーはなくなってしまった。
WRCはなかなか見るチャンスがないので詳しくないのだけれども、ここ数年は北海道でもラリーが開かれるなど、日本でも注目を集めていたようだ。
だから、一気に2つの会社が撤退を表明したときはとても残念だった。

そしてこんな記事も。
・日本のメーカーに必要か!? ~モータースポーツのこれからを考える
http://www.webcg.net/WEBCG/news/n0000020317.html
この記事では、「モータースポーツはもはや、時代にそぐわない」と書き、モータースポーツの現状を分析している。
イメージ戦略としてのレース参戦。
その戦略のミスマッチから、(上で私も触れたが)苦肉の策としてF1に地球を描いたホンダ。
モータースポーツへの参戦目的の1つは量産車へ技術をフィードバックすることだが、量産車のほうが技術が進んでいることもある現状。
「モータースポーツのあり方も、根本的に見直されるときなのかもしれない」と最後に結んでいる。

WRCについては、次の記事が参考になる。
・スズキ&スバル撤退、WRC氷河期へ
http://www.ocn.ne.jp/sports/motorsports/motor081222_1.html
撤退に関しては、「『休止』という言葉を使ったスズキは将来の活動再開の可能性を含むものだが、スバルの『終了』はしばらくの間やるつもりがまったくないことを意味する」と著者は記している。
「スズキ、そしてスバルとも活動を止める最大の理由は業績の悪化である」という点は、ニュース発表時に想像がついた方もおられるだろう。
スズキは「撤退が規定路線」であったのに対し、スバルは「最後の最後まで混乱がつづいたと思われる」というのが著者の分析である。
最後は「ホンダも含めた日本メーカー4社の引きぎわがまったく美しくなかったことが残念でならない」と結んでいる。
まるで日本にはレース文化がないことを象徴しているかのような文である。
ただ、ホンダの福井社長がインタビューで話したような事情も考慮しなければいけないだろう。
自動車会社の経営陣はF1チームのスタッフよりも多いであろう数万~数十万人もの雇用に責任を負う立場にあること、また自動車会社の業績が回復しないことにはレース活動の再開もおぼつかないことは、こちらも理解すべきだから。

アマチュアスポーツの撤退も相次いでいる中、モータースポーツも時代の流れには抗うことは出来ないのかもしれない。
現状では仕方ないが、いずれ復活して欲しい。

PS トヨタがWRCに参戦していたことや、スバルがF1のエンジンを作っていた(1990年、途中で撤退)ことを知っている人はどれくらいいるのかな?

関連リンク
・ホンダはなぜF1から撤退するのか?――社長会見を(ほぼ)完全収録
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0812/06/news004.html
・スバルはなぜWRCから撤退するのか――社長会見を(ほぼ)完全収録
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0812/17/news058.html

« Songsmithが熱い? | Main | 打ち砕かれるクラウドコンピューティングの神話 »

「スポーツ」カテゴリの記事

Comments

Hello there! Do you use Twitter? I'd like to follow you if that would be ok. I'm absolutely enjoying your blog and look forward to new posts.

Post a comment

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/83065/43989190

Listed below are links to weblogs that reference 相次ぐレース撤退に思うこと:

« Songsmithが熱い? | Main | 打ち砕かれるクラウドコンピューティングの神話 »

June 2017
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ