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「失われた10年」と医薬品のネット販売

激動のIT革命10年で学んだ人、学ばなかった人
http://it.nikkei.co.jp/business/column/natsuno.aspx?n=MMIT33000025022009

夏野氏は、NTTドコモへ入社した1997年を「大企業はつぶれないという神話が崩れ、日本が大きな転機を迎えた年」と振り返る。
その後、記事にあるように携帯電話は大きく進化していった。
ITが変化した10年については、(国民生活の)「変化の中心にいることができたのは、本当にラッキーなことだった」と述懐している。
一方で、同時期は「失われた10年」「ITバブルとその崩壊」の時期ともオーバーラップする。
前者の説明は記事の本質ではないので省くが、後者はまさに10年でITがジェットコースターのように大きく揺れ動くが如く変化したことを示す、重要なエピソードといえる。
ITが変化した10年は、「失われた10年」と引き換えに得たものかもしれない。

そして、「日本は、この10年間で何かを学んだ人とまったく学んでない人に、あるいは学習した会社・組織と学習していない会社・組織に完全に分かれた気がする。この10年間で、経済と社会は全く異なるステージに完全移行したと思う」と持論を展開する。
会社・組織が「完全に分かれた」はややオーバーだろうが、経済と社会が10年前と今では異なるステージにいることは確かだろう。
特に今現在は。
「IT革命が私たちにもたらした情報流通スピードの高速化、社会変化スピードの速さ、多種多様なプレーヤーの相互関係から生まれる複雑さに、過去のやり方で対応しようとしても無理である」も、耳を傾けるべき点はある。
そして夏野氏は、10年前と今の前提が異なる中で、「学んでない人々、懲りない人々は、未だに昔のやり方・考え方を持ち出すことがある」と切り捨てる。

過去・歴史に学ぶべき点は多い。
それは10年前であっても、だ。
だからといって、過去に固執・拘泥することはよくない。
旧態依然としたやり方が常に通用するとは限らないからである。

一方で、新しいものが必ずしもよいわけではない。
「昔のやり方・考え方を持ち出す」ことに夏野氏は否定的だが、状況によっては過去からの積み重ねで得られたやり方や考え方のほうがよい場面もあるだろう。
「過去の過ち」を二度と犯さないためにも、重要な点だ。
中には、「今起きていることはすべて過去にあり、論語など歴史書を見ればわかる」と豪語される方もいる。
加えて、「ソフトウェア職人気質」という本でも、「職人」は安定したテクノロジを使う、ということが書かれている。
要は、新しいものに安易に飛びつくことを戒めているのだ。
(これもケースバイケースではあり、時には新しいものを選んだほうがいいこともある。古いもの、新しいもの、それぞれに優れた点があり、使い分けることが肝要ではないだろうか。また、新しいものを否定し続けるようでは進歩が止まる)

ただ、「携帯電話のビジネスモデルへの総務省の介入も「今さら感」が拭えない」については同意できる箇所もあるが、一方で介入前で主流の「通話料で携帯電話本体の値引きを回収する」という、長く携帯電話を使う人たちにとっては歪んで見えるビジネスモデルがよいとも思えない。
(国の強引な介入がよかったかどうかは別問題)

後半では、夏野氏は大衆薬のネット販売規制について主張しているが、これはちょっと乱暴だろう(薬学が専門ではない夏野氏が、薬について無知な部分があるのは否めない。もっとも、それは私にも言えるが)。
「大きな社会的便益の逸失につながる」のは確かだが、ネット販売の行きすぎはよくない。
社会的便益云々を過度に主張することは、市場原理主義者、守銭奴や金の亡者のやることである。
また、検討会のメンバー構成の偏り、「前世紀の遺物」にしがみつく旧態依然としたルール決定には、指摘どおり確かに問題がある。

だが、ルール検討の過程では、薬害の被害にあったメンバーが安全性への疑問を投げかけるなど、耳を傾けるべき内容もある。
多くの国民の意見を取り入れることは大切だが、一方で行き過ぎた大衆迎合もまた問題で、少数派の意見もある程度は尊重すべきである。
それらを果たす役割が、有識者の検討会にあるのではないか。
だからこそ、有識者メンバーの構成は大切ではある。
私の主張は、「医薬品のネット販売に潜む問題」(http://danpaleta.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-1ca6.html)に書いたので、そちらも読んで欲しい。

「すべての商品の安全性を国で審査させることは不可能だし、もしやらせたら、そのためのコストは膨大になるだろう」のは確かだ。
国が出来ることには限界があり、また政府における無駄なコストを削減することは絶対にしなくてはいけない。
だが、世の中にはコストに変えられないものもある。
医療など、人の命にかかわるものだ。
その見極めは必要だろう。
(だからといって、コスト削減の努力を怠ってはいけない。コストも含め、日本医療はさまざまな問題を抱えているが、コスト削減と質の向上という二律背反しているように見える問題でも、二兎を追う努力は必要だ)

夏野氏は、時代が変化する中で「自分のしていることが後の世代に評価されると思いますか、本当に自信があるのですか。未来を生きていく自分の子どもに、自分がしていることを堂々と伝えられますか」と書いている。
この行動基準は大切なことだ。
私もこの点はまだ未熟なので、自分の行動が未来の人たちに評価されるように努め、意識したい。
ただ、医薬品のネット販売に関しては、あえてその言葉を夏野氏にそのまま返したい。

最後に、夏野氏は記事の前半で「官製不況の責任は誰が取るのか」と不況の責任が国にあるように書いていながら、後半で「日本の消費者の中には何でも国のせいにする人もいる」と書いているが、真意は……

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