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July 2009

日本の温室効果ガス削減はこれでいいのか - 「「中期目標」に見る日本の本当の危うさ」を読んで

日本が温室効果ガスの中期削減目標(http://www.kantei.go.jp/jp/asospeech/2009/06/10kaiken.html)を出して、もうすぐで1ヶ月になる。
私は、2005年比15%(1990年比8%)削減という目標は、実際に達成できるかどうかという点でぎりぎりの線であり、それゆえ高くはないが低くもない目標でもあると考えていた。
1990年から2005年にかけて温室効果ガスの排出量が増えている(増えてしまった)ことが、その根拠にある。

しかし、中には手厳しい見方をする人もいる。

・「中期目標」に見る日本の本当の危うさ――コペンハーゲンでの大敗北は避けられるか
http://eco.nikkei.co.jp/column/iida/article.aspx?id=MMECcm000026062009

飯田氏は冒頭から、「『世界をリードする目標』のはずが、国内の環境NGOからはもちろんのこと、途上国からも他の先進国からも、そして国連事務総長からも失望や批判の集中砲火を浴びた」「世界の潮流から大きくズレた日本」と批判している。
それもそのはず、飯田氏によれば2005年比15%の削減目標は「1990年基準で8%削減。京都議定書の目標よりもわずかに2%深掘りしただけ」なのだから。
そして「数字遊び」と斬り捨て、「正統性(レジティマシー)を欠いた政治は、自らの正統性をおとしめるだけである」と主張しているのだ。
根拠としては、次の5点がある。

  1. 都合の良い「基準年ずらし」(「90年基準は不公平」であり、政治家の「90年基準はEUにとって有利になる陰謀だ」は妄言、との指摘)
  2. 「日本は省エネ社会」という神話(「日本は世界一のエネルギー効率社会」に見えるのは「満員電車とウサギ小屋」(狭い住宅)があるからとの指摘)
  3. 「京都議定書不平等条約説」(実際は「日本に最大限、配慮した条約」というのが飯田氏の考え。「途上国を含めた削減の枠組みは必要」の点も指摘している)
  4. 日本にだけ有利な「公平性」(日本に都合がよいであろう「限界削減費用」と「GDPあたり対策費用」は「客観的な国際比較が困難」であり、飯田氏いわく「より説得力のありそうな」指標である「「1人あたり排出量」や中国が提唱する「歴史的な排出総量」」は考慮されていないとのこと)
  5. 「悪魔」は細部に宿る(政府が行った世論調査やパブリックコメントでは印象操作が行われている、と飯田氏は主張する)

そのほか、3月中旬に日本経団連が大手新聞へ出した意見公告について、飯田氏は「『国民負担』の大きさを理由に、過大な削減をけん制する内容」「しかもその論拠は、上で述べた『ウソ』が駆使されたもの」と批判している。
広告で使われたマクロエネルギー経済モデルについても、次の3つの問題点を挙げている。

  1. 目先の対策費用や国民負担の違いだけが強調されすぎている
  2. 従来の「古い経済構造」をモデル化したものであり、「新しい経済構造」は表現できない
  3. モデル上で温室効果ガスを引き下げるためには、エネルギー価格を引き上げ、経済活動量を低下させるような想定となっている

「メリットが提示されていないなど、著しくバランスを欠いたかたちで、国民負担の大きさだけを強調する提示の仕方は、『脅し』以外の何ものでもない」とまとめている。
それに対し、マッキンゼーが「グリーンテクノロジーの急速な普及とコストダウン、そしてプラスの経済的恩恵のお陰で、温室効果ガスの濃度を450ppmに抑制するための費用は、わずかにGDPの0.6%以下だと報告している」ことも、記事には載っている。
これが事実であれば、中期目標達成の希望は明るいと私は考える。
グリーンテクノロジーに携わる人たちの士気も上がるだろう。

記事の後半で、飯田氏は「政府がまともな仕事をしていない日本に対して、先行する欧州、そしてオバマのアメリカは、はるかにしたたか」と述べている。
そして、「EUの削減のほとんどは、何と言っても20年までに一次エネルギーの20%導入を各国に義務づけた「自然エネルギー指令」と、段階的に厳しくなる欧州排出量取引制度(EU-ETS)である」こと、アメリカはオバマ政権以後「グリーン景気刺激策」や「全米の排出量取引の枠組みや全米RPS法などを含んだ包括的な温暖化対策法案」である「Waxman-Markey法案」を成立させるなどを指摘している。
これらについて「欧州も米国も、COP15での途上国との交渉を睨んで、「二枚腰の削減目標」を持ちつつ、しかもその両方を達成する現実的な手段も手にしつつある」とまとめている。

このほかに、「日本はほぼ京都議定書の目標がこの2、3年は達成できる」との観測に対し、「本質的な産業構造やエネルギー構造の転換は、いっさい進んでいない」とも指摘する。
加えて、「世界からも日本の存在感は大きく失われつつある」「日本は(中略)、自己矛盾しているばかりか、COP15での交渉を自ら難しくしている」とも主張している。
この飯田氏の主張のように、温室効果ガス削減交渉が厳しくなるという見方が出るということは、日本が世界各国の動向を正確に把握して切れていないという裏返しなのかもしれない。

同じく記事の後半にある、「中期目標へのパブリックコメントで、「90年比+4%」という選択肢が圧倒的多数(74.4%)の支持を集めたとの報告があった」に対し、「経済界による「動員」の結果以外の何ものでもない」というのは、根拠がない限り、飯田氏の思い込みが激しいようにも感じる人がいても仕方ないだろう。
(個人的には、動員は誘導と読み替えてもいいとは思う。根拠さえあれば、だが)。
ただし、「この結果を見て、「異常」と思わない人がいるとすれば、その方が異常なのではないか」の意見は、私も同意する。

確かに、京都議定書の目標と比較すると、中期目標は2%しか削減幅を広げていない。
私の考えは、政府は現時点では目標が低いとの批判は甘んじて受けつつも、時間をかけて目標を上方修正していけば(例: 1990年比10%→12%→15%)、最終的に批判を跳ね返せるだろう、ということである。
さすがに1990年比4%増という目標では、斉藤環境相のコメントのように「世界の笑いもの」になってしまいかねず、それだけはまずいだろうと私は考えていた。
それゆえ、今は中期目標が低くても仕方ない、とも考えている。
だが、それではダメなのだろう。
温室効果ガス削減交渉は国益と国益のぶつかり合いになるからだ。
それだけに、世界各国の動向を踏まえ、かつ技術進歩による温室効果ガス削減を可能な限り進めることが重要になる。
その一方で、目先のことばかり考えるのではなく、50年後、100年後、数百年後、千年後、……の地球を守るという広い視野を持つことも必要と、私は考える。

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