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日本の温室効果ガス削減はこれでいいのか - 「「中期目標」に見る日本の本当の危うさ」を読んで

日本が温室効果ガスの中期削減目標(http://www.kantei.go.jp/jp/asospeech/2009/06/10kaiken.html)を出して、もうすぐで1ヶ月になる。
私は、2005年比15%(1990年比8%)削減という目標は、実際に達成できるかどうかという点でぎりぎりの線であり、それゆえ高くはないが低くもない目標でもあると考えていた。
1990年から2005年にかけて温室効果ガスの排出量が増えている(増えてしまった)ことが、その根拠にある。

しかし、中には手厳しい見方をする人もいる。

・「中期目標」に見る日本の本当の危うさ――コペンハーゲンでの大敗北は避けられるか
http://eco.nikkei.co.jp/column/iida/article.aspx?id=MMECcm000026062009

飯田氏は冒頭から、「『世界をリードする目標』のはずが、国内の環境NGOからはもちろんのこと、途上国からも他の先進国からも、そして国連事務総長からも失望や批判の集中砲火を浴びた」「世界の潮流から大きくズレた日本」と批判している。
それもそのはず、飯田氏によれば2005年比15%の削減目標は「1990年基準で8%削減。京都議定書の目標よりもわずかに2%深掘りしただけ」なのだから。
そして「数字遊び」と斬り捨て、「正統性(レジティマシー)を欠いた政治は、自らの正統性をおとしめるだけである」と主張しているのだ。
根拠としては、次の5点がある。

  1. 都合の良い「基準年ずらし」(「90年基準は不公平」であり、政治家の「90年基準はEUにとって有利になる陰謀だ」は妄言、との指摘)
  2. 「日本は省エネ社会」という神話(「日本は世界一のエネルギー効率社会」に見えるのは「満員電車とウサギ小屋」(狭い住宅)があるからとの指摘)
  3. 「京都議定書不平等条約説」(実際は「日本に最大限、配慮した条約」というのが飯田氏の考え。「途上国を含めた削減の枠組みは必要」の点も指摘している)
  4. 日本にだけ有利な「公平性」(日本に都合がよいであろう「限界削減費用」と「GDPあたり対策費用」は「客観的な国際比較が困難」であり、飯田氏いわく「より説得力のありそうな」指標である「「1人あたり排出量」や中国が提唱する「歴史的な排出総量」」は考慮されていないとのこと)
  5. 「悪魔」は細部に宿る(政府が行った世論調査やパブリックコメントでは印象操作が行われている、と飯田氏は主張する)

そのほか、3月中旬に日本経団連が大手新聞へ出した意見公告について、飯田氏は「『国民負担』の大きさを理由に、過大な削減をけん制する内容」「しかもその論拠は、上で述べた『ウソ』が駆使されたもの」と批判している。
広告で使われたマクロエネルギー経済モデルについても、次の3つの問題点を挙げている。

  1. 目先の対策費用や国民負担の違いだけが強調されすぎている
  2. 従来の「古い経済構造」をモデル化したものであり、「新しい経済構造」は表現できない
  3. モデル上で温室効果ガスを引き下げるためには、エネルギー価格を引き上げ、経済活動量を低下させるような想定となっている

「メリットが提示されていないなど、著しくバランスを欠いたかたちで、国民負担の大きさだけを強調する提示の仕方は、『脅し』以外の何ものでもない」とまとめている。
それに対し、マッキンゼーが「グリーンテクノロジーの急速な普及とコストダウン、そしてプラスの経済的恩恵のお陰で、温室効果ガスの濃度を450ppmに抑制するための費用は、わずかにGDPの0.6%以下だと報告している」ことも、記事には載っている。
これが事実であれば、中期目標達成の希望は明るいと私は考える。
グリーンテクノロジーに携わる人たちの士気も上がるだろう。

記事の後半で、飯田氏は「政府がまともな仕事をしていない日本に対して、先行する欧州、そしてオバマのアメリカは、はるかにしたたか」と述べている。
そして、「EUの削減のほとんどは、何と言っても20年までに一次エネルギーの20%導入を各国に義務づけた「自然エネルギー指令」と、段階的に厳しくなる欧州排出量取引制度(EU-ETS)である」こと、アメリカはオバマ政権以後「グリーン景気刺激策」や「全米の排出量取引の枠組みや全米RPS法などを含んだ包括的な温暖化対策法案」である「Waxman-Markey法案」を成立させるなどを指摘している。
これらについて「欧州も米国も、COP15での途上国との交渉を睨んで、「二枚腰の削減目標」を持ちつつ、しかもその両方を達成する現実的な手段も手にしつつある」とまとめている。

このほかに、「日本はほぼ京都議定書の目標がこの2、3年は達成できる」との観測に対し、「本質的な産業構造やエネルギー構造の転換は、いっさい進んでいない」とも指摘する。
加えて、「世界からも日本の存在感は大きく失われつつある」「日本は(中略)、自己矛盾しているばかりか、COP15での交渉を自ら難しくしている」とも主張している。
この飯田氏の主張のように、温室効果ガス削減交渉が厳しくなるという見方が出るということは、日本が世界各国の動向を正確に把握して切れていないという裏返しなのかもしれない。

同じく記事の後半にある、「中期目標へのパブリックコメントで、「90年比+4%」という選択肢が圧倒的多数(74.4%)の支持を集めたとの報告があった」に対し、「経済界による「動員」の結果以外の何ものでもない」というのは、根拠がない限り、飯田氏の思い込みが激しいようにも感じる人がいても仕方ないだろう。
(個人的には、動員は誘導と読み替えてもいいとは思う。根拠さえあれば、だが)。
ただし、「この結果を見て、「異常」と思わない人がいるとすれば、その方が異常なのではないか」の意見は、私も同意する。

確かに、京都議定書の目標と比較すると、中期目標は2%しか削減幅を広げていない。
私の考えは、政府は現時点では目標が低いとの批判は甘んじて受けつつも、時間をかけて目標を上方修正していけば(例: 1990年比10%→12%→15%)、最終的に批判を跳ね返せるだろう、ということである。
さすがに1990年比4%増という目標では、斉藤環境相のコメントのように「世界の笑いもの」になってしまいかねず、それだけはまずいだろうと私は考えていた。
それゆえ、今は中期目標が低くても仕方ない、とも考えている。
だが、それではダメなのだろう。
温室効果ガス削減交渉は国益と国益のぶつかり合いになるからだ。
それだけに、世界各国の動向を踏まえ、かつ技術進歩による温室効果ガス削減を可能な限り進めることが重要になる。
その一方で、目先のことばかり考えるのではなく、50年後、100年後、数百年後、千年後、……の地球を守るという広い視野を持つことも必要と、私は考える。

「知的財産推進計画2009」で医療特許は変わるのか

先日、「知的財産推進計画2009」が発表された。


今回の目玉は、医療分野における特許保護の見直しだろう。
iPS細胞の特許問題がクローズアップされる中、日本における医療技術の進展を促すために必要な特許のあり方を、計画を立てた人たちが議論を重ねてきたことは、資料から伝わってくる。
その中で、「先端医療分野の特許保護に係る我が国の取り組むべき課題」において、次の3つの課題を取り上げている。
  1. 審査基準における特許対象の明確化が必要
  2. 特許対象範囲の見直しが必要
  3. 研究者等に対する先端医療特許取得への十分な支援が必要

そしてそれぞれについて、例えば最初は効率的な投薬(DDS: Drug Delivery System)の特許などを示し、わかりやすく課題への取り組みを示している。

今後、医療従事者や医療機器メーカーなどは、上記のあり方を踏まえたうえで、特許や知的財産に対する戦略を考えていく必要があるだろう。
そして、上記に挙げた課題を解決していくことで、医師にも患者にとっても「よりよい医療」の提供が進めば、と考えている。

私は、医療方法特許の功罪で書いたように、「医療方法特許については、欧米など他国の現状も踏まえつつ、医療関係企業のやる気を引き出す申請制度とし、よりよい医療の提供につなげ、医師や患者にとってプラスとすることが大切であろう」という考えを持っていることに変わりない。
その意味では、今回の「知的財産推進計画2009」により、よりよい医療の提供に向けて少しは前進しているのだろう。
今後を注意深く見守りたい。

大学進学に見る格差の固定

日本では諸外国と比べ、子供を大学へ通わせるのにお金がかかるといわれている。

・現在の世界各国の大学の学費
http://r25.jp/b/wp/a/wp/n/%91%E5%8Aw/i/%8C%BB%8D%DD%82%CC%90%A2%8AE%8Ae%8D%91%82%CC%91%E5%8Aw%82%CC%8Aw%94%EF

上記記事によれば、『経済セミナー No.636』において、「日本の国立大学の学費は極めて高く、高等教育の機会が経済的側面において公平に確保されているとは言えない」、「国公立大学でも諸外国との比較で重い負担を強いられている」ことを指摘している。

また、「国公立大の授業料を引き下げよう」(http://mainichi.jp/select/biz/katsuma/crosstalk/2009/05/post-17.html)では、「経済協力開発機構(OECD)主要12カ国の中で、日本の家計に占める教育費負担の割合は22%」とある。これが少子化や格差固定、内需不振の弊害を生んでいると、記事では指摘している。

こちらでは、先進国の多くは大学授業料が日本よりもずっと安いなど、諸外国の学費の違いをまとめている。
http://www.jcp.or.jp/youth/gakuhi/co_01.html

そして、親の所得格差がもたらす教育への影響を問題視している方もいる。

・「教育費をタダにせよ」親の所得格差が生み出す教育格差は亡国への道
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090407/191216/

上の記事の著者は、大学通学にあたり、「子どもの教育費を払い続けるのは至難の業と言っていい」、「親の所得によって、教育の格差がつく」などと指摘している。
そして、スウェーデンを引き合いにして、教育などの制度が作り出す社会の安心について説明をしている。

参考までに、アメリカのレポートを紹介する。
- Promoting Economic Mobility by Increasing Postsecondary Education
http://www.brookings.edu/papers/2009/05_economic_mobility_haskins.aspx?emc=lm&m=225382&l=17&v=1137380
大学へ通うと収入が上がること、貧しい家庭では大学進学率や中退率が低いことを挙げている。
その解決策として、奨学金の再構築などを提案している。
アメリカでは奨学金制度が知れ渡っていない、また貧しい家庭では返済義務のある奨学金は避ける傾向がある、などの話もあるようで、こういったことが問題を大きくしているのかもしれない。
大学へ行けば収入が上がり、格差の固定を防ぐことは出来るが、大学へなかなか進まない、あるいは入っても中退してしまう。
上で書いたアメリカの実態は、日本でも当てはまる面があるだろう。
だからこそ、上の報告書にある指摘を他国のことと流すのではなく、反面教師とすべきである。

さらに、このような記事もある。

・「大企業」「大卒」「正社員」が有利―日本人の貧富拡大
http://president.jp.reuters.com/article/2009/02/18/9021DD46-F97E-11DD-849B-AB073F99CD51-1.php

これまで取り上げた記事のように、大学に通わせるにもお金がかかる。
それゆえ、「学歴による年収格差は子ども世代においても学歴格差を招き、ゆくゆくは年収格差を固定する方向に働きかねない」ことの理解が必要だと、記事では書いている。
さらに上記記事では、「常識的で平凡だが、非常に重い意味を持つ教訓」として、「できるだけ大きな企業へ正社員として就職する」、「高卒時点ではなく、大学や大学院を出てから入社試験にチャレンジする」ことをあげている。

もっとも、国公立大学の授業料を安くしても、その分は税金で穴埋めされるだろう。
そうなると、大学の費用負担を国民全体で広く浅く行うことになるので、国民の理解が得られなくてはいけない。
その点は重要だろう。
「国公立大の授業料を引き下げよう」にあるように、「国公立大の学費、入学金は所得に応じたスライド制に」のアイディアなどさまざまなアイディアを出し、国民に受け入れられやすい方法を決めていくことが、今後は大切になるか。
あとは、無料にしたらしたで問題はあるだろう(在学年限がなく、かつ授業料も安いヨーロッパでは、学生がずっと大学に残るといったことがあるらしい)。
そういった点も踏まえ、大学の費用の負担を考えていくべきである。

日本を出よ~留学の必要性

・海外で勉強して働こう
http://www.chikawatanabe.com/blog/2009/04/future_of_japan.html

冒頭の

1)日本はもう立ち直れないと思う。
だから、
2)海外で勉強してそのまま海外で働く道を真剣に考えてみて欲しい。

が印象的。

日本に留まりたかったら、一度は留学しておくべき
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51206791.html
では、こう書いている。

現実は実はもっと厳しい。
(中略)
「海外を知らないと日本に留まる資格もない」になりつつあるということは、日本という「怪物」が弱っていることの裏返しでもある。もはや日本を支える人材を、日本国内だけで育てることが無理なのだ。

dankogai氏の上記記事をはじめ、渡辺千賀氏のblogにはさまざまな反響があったようだ。
渡辺氏の記事については、極端に書くと「日本を捨てろ」などの誤解もあったようで、後に本人がフォローの記事を書いている。

・国や組織はどういう時に良くなるか
http://www.chikawatanabe.com/blog/2009/04/how_things_get_better.html

記事のはじめでは、海外に出た人たちが後に「行った国と日本をつなぐ仕事をする」など海外経験を生かすことで、「日本の将来の担い手になったり、日本の国際社会からの孤立を救うことになる」とまとめている。
「(ちなみに、海外=アメリカ、留学=アメリカ、ではありません。もっと広く「自分にあった場所」を探すのがよろしいかと。)」ともまとめている。
これはもっともである。
数多くの国がある中、アメリカ以外の国にも目を向けることは重要だ。
世界のよいものを日本に取り入れつつ、日本として大切にすべきものをきちんと大切にしていく上でも、心にとどめておきたいものだ。
(ついでに書くと英語=アメリカ英語でもない)
アメリカ中心に物事を見る悪い癖が付いている人にとっては、注意すべき点だろう。
そのほか、上記記事では次の指摘もしている。
「どんな組織も20代にはやる気のあふれた人たちが、30代には「本当はこうすればよいのに!」という斬新かつ具体的な革新案・改革案を持った人がたくさんいるもの。(こういう人たちがいなかったら、その組織は本当に終わっている。)そして、よい組織とは、上層部が、そういう人たちをきちんと引き上げて登用し、彼らのアイデアを実行に移していける組織」
「今の日本の最大の問題は政治」
さらにGDPが十数年前と比べ低下していることも指摘している。
最後はこう結んでいる。

「海外に行きさえすれば何とかなる」、とか、「留学さえすれば何とかなる」、というほどには世の中は甘くない。(中略)自分自身に力がついていきさえすれば、必ず道は開けることでしょう。

このままでは、日本の国際的地位は低下していくだろう。
上で書いたことの繰り返しになるが、このようなときだからこそ、「世界のよいものを日本に取り入れつつ、日本として大切にすべきものをきちんと大切にしていく」必要がある。
そのためには、日本を出て、世界で学ぶ必要があるのかもしれない。
いくらインターネットが普及し、世界の情報が日本にいながら手に入るとはいえ、世界の人たちと直接会えるわけではなく、人と人との出会いから得られる「情報」や「学び」もある。
この点はインターネットが普及した現代だからこそ、考えるべきことである。

医療方法特許の功罪

3/17付け日経夕刊の記事。
・手術・投薬方法を特許に 政府検討、法改正の柱に
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090317AT3S1400G17032009.html

上の記事では概要しか触れられていないが、新聞の元記事では日本とアメリカの特許制度の違いがわかる表なども載っている。

記事によると、手術や投薬方法などの特許、いわゆる「医療方法特許」はアメリカでは50年以上前から認められているという。
一方、日本では「産業上利用することができる発明」、つまり医療は産業ではないため、認められていないことにも触れている。
また、これらの未認可が医薬品会社の国際競争力や(特許料?)収益に影響を及ぼしている旨の記述があり、日本国内医薬品トップのタケダですら世界で約20位でしかないことも書かれている(このあたりうろ覚え)。

日本における医療方法特許導入の動きは、21世紀に入ってからのようである。
2007年に書かれた「欧州承認で岐路に立たされた日本の『医療方法特許』」(*1)の記事によると、日本では2002年より医療方法特許を導入しようという動きがあった一方、2006年にはヨーロッパで医療方法特許が認められたという。

*1: 欧州承認で岐路に立たされた日本の「医療方法特許」
http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz07q4/547916/
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/20071011.html

ヨーロッパでアメリカほど早く導入が進まなかった理由は、倫理的な問題のようである。
かつてはヨーロッパも日本同様、「医療は産業ではない」スタンスであった。
やがて方針を転換したが、それでも前述の通り倫理的問題を重んじ、すぐには医療方法特許を認めなかったようだ。

医療方法特許については、*1にある「(1)全国民が医療を受けられる『医療のフリーアクセス』や患者と医者の裁量権が守られない懸念がある、(2)特許保護による医療費高騰の恐れがある」はもっともであり、一方で「医療分野における日本の国際競争力が低下してしまう」にも説得力はある。
(「医療分野における日本の国際競争力が低下してしまう」については、医療方法特許を認める国なら日本企業であっても申請は出来る、などの理由で懐疑的な見方もある)

記事では「医師の医療行為が特許侵害にあたらないとの例外事項を規定」した上で認めるべきだ、と書かれている。
これは、「知」的ユウレイ屋敷の中の人いわく、当然であり(命の重さには代えられない)、また欧米でも特許法に織り込まれ、少なくとも知的財産法の世界では一般的な認識とのことである。
加えて、医療方法特許は関連する商品(分野)の発明のインセンティブにもなりうるという。
このやり方なら、医療をはじめとする分野において、日本の国際競争力を高めることにつながり、賛成できる。
日経の記事でも書かれているが、それが「患者のため」でもある。

一方で、上のやり方が認められない場合、医療のフリーアクセスの観点では問題がある。
高額なライセンス料による医療費高騰を招きかねないからだ。

医療方法特許については、欧米など他国の現状も踏まえつつ、医療関係企業のやる気を引き出す申請制度とし、よりよい医療の提供につなげ、医師や患者にとってプラスとすることが大切であろう。

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ただ、「産業上利用することができる発明」ではない医療方法特許を認めるのであれば、例えば今後は次のようなものも特許になりうるか。

  • F1ドライバーやモトGPライダー並みのテクニックで走れる、自動車やバイクの運転方法
  • ギター早弾きのような楽器演奏方法(エアギターも?)
  • メイク方法

新しいかたちの商標

「ピポピポ」「ハ~イ」…導入が検討されている“音の商標”って何?
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090223/1023993/
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090226-00000001-trendy-ind

「文字・図形などの視覚的に表示(識別)できるものしか登録商標として認めていない日本の商標法における商標の概念を見直す時期に来ている」(堤信夫・久光製薬法務部長)

今まで商標というのは、視覚的に識別できるものだけが登録できたようだ。
最近の日本では立体商標といい、キャラクターなどの立体も商標として登録できるようになった(Wikipediaによると日本では1997年から認められた)。
立体商標の第1号は、ペコちゃんやケンタッキーのカーネル・サンダースなど。
ただ、立体商標も「視覚的に識別」という解釈を超えるものではない。
日本において「五感」のうち視覚以外の4種、すなわち聴覚(音)、嗅覚(におい)、触覚(モノの手触り)に分類できるものも商標として登録できるようにしようという動きがあるようだが、それは昨年(2008年)6月に日経で報道があって知られるようになるなど、ここ最近の話である(味覚はどうなのだろうか)。
http://www.iip.or.jp/summary/pdf/detail01j/13_01.pdfによれば、海外ではすでに音なども商標として認めている国がある。
それに比べると、日本の動きは遅い、と上っ面だけ見て批判するのはたやすい。
ただ、現実はさまざまな障壁があり、導入検討が遅れたのだろう。

もっとも、音などが商標として認められる動きは1990年代になって世界各地で盛んになったようで、特許の概念としては視覚的なものと比べて歴史が浅いもののようだ。
それでも、サウンドロゴについては日本でも森永やソニーなどが以前から積極的に取り入れていたので(そして一緒に流れる映像にも力を入れていたようで、ソニーは1980年代、サウンドロゴの導入とともに多額のお金をかけ、球(点)で構成された「S」の文字のCGを作成したという)、認知度は高いだろう。
※サウンドロゴにおける考察は、以下に参考になることが書かれている。
新しいタイプの商標、導入を検討へ
http://chiteki-yuurei.seesaa.net/archives/200806-1.html

音のほか、においなども商標として登録できることは、権利の侵害を防ぐ上では大切なことである。
だが、前述の通り、海外において商標を音や映像などに広げ始めたのは最近である。
「耳コピ」できる音楽はともかく、においなどはどのようにして権利を侵害しているか判断が難しいというのが、その理由かもしれない。
(なお、色だけを商標として登録するのが困難な理由の1つも、権利侵害の判断が難しい点にあるようだ)
においならどの成分をどの割合で調合したか、においに必要な成分を生成した方法は何か、などがわかればいいのだろうけど、それはにおいそのものの判別(においならそれが商標の侵害有無の判断基準の1つ?)よりも生産方法などになり、従来のように(?)特許として保護されるのが適切かも知れない。
あと、音楽であれば著作権で守られており、サウンドロゴもある意味「音楽」だろう。
だから、サウンドロゴを商標で守れば多重(過度)の保護(独占排他権の抵触・侵害と書くのが正しい?)になるのでは、というのが理由で、商標として保護されていなかったかどうかは定かではない(いわゆる「動く商標」であれば、「音楽」を「映像」に置き換えれば同じことか)。
(法律的な解釈に関して抜けがあれば補ってください)

商標を「視覚的に識別できる」という観点から見ると、「動く商標」、さらに広げると映像も含めたVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、1990年代以前でも商標として認められていても不思議ではない。
しかし、そのころはまだ企業もTVでの動くロゴの意識が低い、法解釈が進んでいなかった(?)などの理由があり、「動く商標」などの導入検討が遅れたのかもしれない(もっとも、後者は著作権など他の権利との兼ね合いもあるだろうけど)。

(ネタ)国立大の統廃合で衝撃的私案

数年前から国立大は統合が実施されているが、ネタとしてこんな統合案を出した人が。

・国立大学の統廃合私案
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090303

記事よりもコメントのほうが面白い、という人がいるかも。

繰り返すが、あくまでも「ネタ」(統廃合の対象になった大学出身の人は気分を悪くしないように)。
結果は「88校が27校に」。

ただし、廃止・統合基準がいい加減過ぎる(それが「ネタ」と書いた理由)。
あと、大外大の統合(→阪大)を知らないなど、公開資料を鵜呑みにし過ぎ(間違った資料を公開する文科省も悪いが)。
大学院に関しては、「『4年制大学の教育機関』としての統廃合案であり、研究機関としての大学院については別途検討」なので、まったくあてにならず(特に大学院のみ、もしくは重視の大学)。

なお、上の統合案は、国立大学は真のエリート養成校だけにする(それがよいかどうかは別)、という観点ならば一部賛成。
(エリート養成校として残すのは、http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51184470.htmlいわく「保守的で退屈」かも知れないが、大学院も含め旧帝大+αが理想か。+αは母体・統合対象大学の業績や地域・人口バランスを考慮して決定、10から20大学)
国立大学の存在意義を考えるなら反対(ただし、国立大統合の余地はまだある)。

あと、公立や私立大学はどうなのだろうか。
私立の場合、数が尋常ではないので、国立以上にまとめるのが大変か。
# 上のblogの人なら、残すのは早慶だけ、とかになったりして

PS 以前、医療(~費削減)のためには「過疎地から人々を追い出せ」と主張される方がいたが、大学にも当てはまる?(それがよいかどうかも議論の余地がある)

2つの"COP"のつながり

少し前にニュースで踊っていた、COPという略語。
たいていのニュースでは、今月13日に閉幕したCOP14、つまり気候変動枠組条約の第14回締結国会議の方を指している。
かなり大雑把に書くと、地球温暖化問題について、「京都議定書」の期限以降どうするかを決めるための会議。

一方、COP10と書かれている場合、今日本では上の条約の第10回会議のことじゃなくて、生物多様性条約の第10回締結国会議を指すのが暗黙の了解のようだ。
知っている人もいると思うけど、会議が日本で開かれる(http://www.cop10.jp/aichi-nagoya/)ので、注目されているのだ。
私としては、生物多様性をダシにして、会議で使う施設の改修などの公共事業の名の下に利権をばら撒いたり金儲けをしたりすることはせず、会議の趣旨を開催地の人たち(特に「議員」さん)が正しく理解し、粛々と会議を開催する、あるいは協力していくことを切に願う。
地域振興などの利益は後から付いてくるのだから。

で、COPはどっちもConference of Parties(締結国会議)の略。
文脈を正しく読み取らないと、混乱に拍車がかかりそう(私も混乱しそう)。

肝心のCOP14のほうは、残念ながら成果があまり出なかったとのこと。
新聞の社説でも厳しい見方をしている。

12/16付朝日新聞社説: (後半)温暖化防止―「南北共益」の道はある
http://www.asahi.com/paper/editorial20081216.html
12/16付毎日新聞社説: COP14閉幕 環境と経済の両立日本が示せ
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20081216k0000m070140000c.html
12/14付読売新聞社説: COP14 険しさを増した「ポスト京都」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20081213-OYT1T00837.htm
(参考)12/16付産経新聞主張: 排出量取引 EUと競える制度構築を
http://sankei.jp.msn.com/life/environment/081216/env0812160251000-n1.htm

温室効果ガス削減義務を負いたくない途上国、景気後退で削減どころでなくなった先進国。
この構図もあり、長期的な(2050年ごろの)削減目標では一致を見なかったとのこと。
温室効果ガスの削減は世界的課題であることを考えれば、どの国ももわがままは許されず、責任を持って取り組まなくてはならないと私は考えている。
だから、途上国は今の先進国並みを目指し、先進国は途上国を先導する意味でも今以上に温室効果ガスの削減に取り組めば、お互い文句が出ることもないだろう。

最後に、COP10で議論されるはずの生物多様性の乱れも、温室効果ガス増加などによる地球温暖化をはじめとする、地球環境の変化が間接的に影響しているだろう。
同じCOPの略語で紛らわしい2つの会議・2つのテーマではあるが、実は関連があるのだ。
そのことに気付いている人たちはどれだけいるのだろうか。

重言には注意

つい使ってしまう重複表現ランキング
http://ranking.goo.ne.jp/ranking/999/repeat_expression/

「最後の切り札」「ダントツの1位」なんて無意識に使ってしまいそう。

生物学と情報学の融合に見る人材の専門性

生物学と情報学を融合(2008/7/23 読売)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20080723-OYT8T00222.htm
※追記: 現在はリンク切れ

以前、「早大理工と筑波大医学群が連携、何をもたらす?」(http://danpaleta.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post-0d76.html)というblogを書いた。
この内容に関連して、その後読売新聞で上のような記事が出たので、ここで紹介。
記事では、東大で設立され、生物情報学を主に担う「オーミクス情報センター」を主に取り上げ、昨年度設立された理学部の生物情報科学科のことにも言及している。

上で取り扱っている研究は、生物学、医学、薬学、情報(工)学(計算機科学、情報科学、……)といった分野が絡み合い、横断している。
それだけに、たとえば「ゲノムなどで得られた膨大な情報の解析」(記事中)などは特定分野だけ詳しくてもだめである。
記事でも服部センター長の「これまでの研究は一個一個の遺伝子やたんぱく質の役割を解析していればよかったが、今後はコンピューターを駆使して生命現象を俯瞰(ふかん)的にとらえる必要がある」という発言を載せている。

コンピュータを使うのは手段であり、目的ではない。
とはいえ、記事にある「遺伝子の働き方やたんぱく質の相互作用などの情報を基に、細胞の中で起こる現象をすべてコンピューター内で再現できれば、薬がどのように作用するか分かり、新薬開発も加速」させるといった、様々な分野が絡み合う課題を解決するという目的の達成は難しい。
上ではコンピュータに詳しくなければ、あるいはITの専門家と協力しなければ、解決は難しいだろう。
こういった状況の中で問題を解決していくには、ゼネラリストやスペシャリストだけではなく、ポリヴァレントなヴァーサタイリストが必要ではないだろうか。
それに向け、生物情報科学科のような学科が作られたことはよいことだし、こういったところで学べる学生がうらやましくも感じる。
そして、いずれは生物情報科学科のような学科、医学、薬学などのうち2つの学位が取れる大学や大学連合(「早大理工と筑波大医学群が連携、何をもたらす?」で取り上げたデュアル・ディグリーとも関連)も生まれるだろう。

ただ、「複数の分野に精通し、かつ視野も広く、そしてなにより臨機応変に活動できる」人材を育成するというのは、スペシャリストとゼネラリストそれぞれの素養のバランスも必要になると考えている。
そのバランスを取るのは、ある意味アンビヴァレント(表裏一体、二律背反 )で、難しい。
私は「ヴァーサタイリストとポリヴァレントの共通点、そして重要性」(http://danpaleta.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post-52bc.html)で「まず1つの分野に、それから複数の分野に精通することがヴァーサタイリスト、ポリヴァレントへ近づく道」と趣旨の文を書いた。
それが今の私が考えうる、スペシャリストとゼネラリストそれぞれの素養のバランスを取る方法の1つである。
ただ、もっとよい方法もあるのだろうが、じっくり考えないと出てこない。
それゆえのアンビヴァレントな課題である。

March 2017
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